2011年4月13日水曜日

4月13日 連続出動と初療大荒れ

本日は7人,救命救急センターへ入院.朝から翌朝まで初療は大荒れでした.そんな中だからでしょう,緊急手術も飛び込んできます.S状結腸穿孔,敗血症性ショック.EGDT,ストーマ増設と徹底した腹腔内洗浄,術後はフルモニタによる循環管理.acute care surgeryは外科+救急+集中治療の知識,技術が必要です.周術期管理を全て一貫して行うべき分野.本邦でも少しずつ認識されつつあります.今後は学会レベルで一般市民の皆様への啓蒙も必要かもしれません.

本日のドクターヘリは小林,松井先生,林看護師です.豊岡ドクターヘリを象徴するかのような1日です.

☆ドクターヘリ1・2件目+離陸前キャンセル CPA・呼吸困難・小児痙攣

午後1番でヘリ要請です.救急覚知2分後の覚知同時要請.ヘリは指定されたランデブーポイントが散水のため,着陸に時間を要すると判断し,地上支援隊と協議,協力をもらい,隣のアスファルト駐車場に着陸します.


程なく救急車到着.車内で気管挿管,ルート確保,オートパルス装着し9分で機内収容,TECCMCへ搬送です.

離陸直後に2件目の要請.TECCMCのヘリポートでホットローディングのまま患者さんを池田先生へ引き継ぎ再離陸です.

2件目も同時要請.いつものランデブーポイントに着陸.救急車内での診療を行っていると,「先生!別要請です!!」と機内スタッフから.

今の患者さんの病状,既往から直近かかりつけ病院への搬送が適切と判断し,松井先生のみ同乗で救急車搬送とします.

小林,林看護師は機内へ戻り,離陸準備.松井先生を乗せた救急車が出発した直後,「ヘリ要請,キャンセル.」と運航管理室から連絡.松井先生,ゴメン・・・と思いつつもTECCMCへヘリは帰投します.

☆ドクターヘリ3件目 小児痙攣・意識障害

ヘリがTECCMC帰投し,給油を完了した直後に要請です.救急覚知時刻とヘリ要請時刻のタイムラグ0分.医師現場派遣の重要性と有用性を認識している,この地域の消防本部の意識の高さが反映されています.

松井先生はまだ前事案から帰院していません.小林,林看護師で出動です.

ヘリは5分もかからずランデブーポイントへ.程なく救急車も到着し,診療開始です.幸いにも痙攣は消失,しかし意識状態は朦朧.一緒に来ているお父さんもパニックになっておられます.

気道,呼吸,循環の安定化を確認し,速やかにTECCMCへ搬送.小児科の先生へ引き継ぎます.

救急覚知から20分でTECCMC搬入です.通常であればこの倍以上は時間がかかります.

☆ドクターヘリ4・5・6件目 施設間搬送・転落事故・頭部外傷

3件目を搬入して束の間,他院からTECCMCへ脳内出血の患者さんの施設間搬送依頼です.緊急手術の可能性もありヘリ要請となります.

ヘリはいつものランデブーポイントへ到着,救急車を待ちます.松井先生,お疲れの様子か,トーマスバックが重いのか転倒・・・


ランデブーポイントへ患者さんを乗せた救急車が到着,同乗された先生から申し送りを受けます.すると運航管理室から「別件の要請です.乗用車が崖から転落.場所は・・・」との連絡.目の前の患者さんも急ぎます.別件事案も急ぎます.別件事案発生場所はヘリで5分もかからない所.TECCMC搬送経路を少し外れた場所です.

「松井先生は脳内出血の患者さんをTECCMCへ.小林,林看護師はTECCMCへ向かう途中で別事案に降りて現場へ向かいます.松井先生はTECCMC搬送後,またヘリと共に戻ってきてください.」

脳内出血の患者さんを機内へ収容し,離陸.この間5分もかかりません.そして転落事故現場へヘリは向かいます.

5分もかからず事故現場上空へ.事故現場は山頂付近.下から支援車で上がるよりは山頂付近へ着陸しダッシュした方がはるかに早いと判断します.ヘリは消防の許可をもらい上空から安全を確認し山頂付近へ着陸.医療スタッフは資機材を担いで現場付近まで数百メートルをダッシュです.

市民の方から提供していただいた写真です.


事故現場は山頂付近の山道から崖下約30m.すでに救急隊,救助隊が降りて活動しています.現場の指揮官に確認し,現場への医療投入が患者さんにとって最善であると判断します.

小林,林看護師は資機材を背負い,ロープを伝って現場へ降ります.患者さんは乗用車ごと転落され,車外放出されたようです.状況は頭部外傷,胸部外傷.重症度の高い状態です.急ぎましょう.


現場の全員で協力して崖下から山道までロープ救助.その上空にドクターヘリが.そんな中,別事案のヘリ要請です.「頭部外傷,意識混濁.」 本事案の救助までは時間を要します.ならば別事案対応後にこちらに戻って来ても十分間に合うと判断,ドクターヘリは別事案へ松井先生を乗せ出動します.

本事案は人力で藪の中を救助,何とか救急車内へ搬入.さて,あらためて医療開始です.そしてそのころ松井先生は頭部外傷の患者さんを救急隊と共に診療,TECCMCへ最短の時間で搬入してくれていました.

山道から転落車両を見る.藪の中で良くわかりませんが・・・

救急車はランデブーポイントへ向かって出発.ドクターヘリはTECCMCで給油後に離陸,TECCMCへ向かった救急車と隣の消防本部管轄の適当なランデブーポイントでドッキングとなります.

本患者さんは腎損傷に対するTAE後,頭部の緊急手術となり救命することが出来ました.

関係各方面の皆様には人命を最優先に考えていただき,最善の対応をしていただきました.その甲斐あって1つの命が救われています.ありがとうございました.



2 flight doctor制とそのシステムを有効活用しようと思う消防本部.ドクターヘリの一番の目的は「早期医師現場投入」です.救急医療システムとして完全にこの地域に根付きました.今後ともよろしくお願い申し上げます.



余談:この夜,夜勤に入った某センター長は久しぶりの山岳事案対応でぐったりしていたとかいないとか・・・