2011年5月30日月曜日

5月28日〜30日 天気は大荒れ

台風2号の影響で北近畿の天気は大荒れです.29日から30日にかけ,大雨から円山川が増水し豊岡市内は一部水没.上空から見ると,水田が水浸しになっています.今年は何だか自然がおかしい.



28日は幸部先生,岡本先生,林田看護師がヘリ番.3件出動です.

☆ドクターヘリ1件目 意識障害

覚知同時要請です.結果的に院外心肺停止の患者さんでオートパルスを装着しTECCMC搬入です.医療介入は最速です.

☆ドクターヘリ2件目 意識障害

幸いにも状態は安定しておられ,近隣の病院へ搬送させていただきました.応需いただきありがとうございました.

☆ドクターヘリ3件目 小児の意識障害

天候がいよいよ怪しい・・・そんな中の要請です.雲の隙間をぬって海上へ.海上であれば障害物もなく,安全に飛行可能.しかし,海岸線から内陸へは霧と雨雲のため入れません.後ろ髪を引かれる思いでの悪天候・出動後キャンセルです.ドクターカーの運航範囲内であれば同時出動可能だったのですが・・・大変申し訳ありませんでした.


29日は小林,長嶺先生,米田看護師がヘリ番,番匠谷先生がカー番です.

☆ドクターヘリ&カー1件目 滑落外傷

搬送時間が1時間をこえる地域からのTECCMC搬入依頼です.日勤責任者の岡先生は全身観察の結果を聞き,医師の管理下に早期に患者さんをおくのが良いと判断します(本当は現場から要請して欲しかったです.).

ドクターヘリ出動.しかし,天候は最悪.雨も風も強くなっていきます.安全を考慮した飛行経路でランデブーポイントへ向かいます.離陸直後,これは最悪ランデブーポイントへ到着出来ない可能性もあると判断,迷わず運航管理室へ「ドクターカーも同時に出動させてください.」と指示します.

番匠谷先生はカーの助手席に乗り込み出動.空と陸.どちらかが確実に患者さんと接触出来れば良いのです.救急医療は常にセーフティネットを張っておく必要があります.たとえヘリ,カーどちらかが結果的に無駄足になっても,その過程は無駄ではないのです.医師が現場にたどりつけないこと,こちらの方が問題です.

結果的にヘリが安全にランデブーポイントへ到着,カーはこの時点で反転引き上げ.ヘリの医療スタッフは救急車内で外傷初期診療を開始し,速やかにTECCMCへ搬送です.

☆ドクターカー2件目 胸痛

天候不良にてヘリの離陸は不可能な状態になってしまいました.世間が平和であることを祈っておりましたが,ホットラインが鳴ります.

間髪入れず,「カーで対応します.」

番匠谷先生,そしてヘリ番であった長嶺先生,米田看護師がドクターカー・フォレスターに乗り込み現場へ.患者さんのご自宅で診療開始.覚知同時要請は最速の診療開始となります.

そして,救急車に皆で乗り込みTECCMCへ.


30日は小林,前山先生,林看護師がヘリ番です.相変わらずの天候.特に午前中はひどい.しかし,そんな中・・・

☆ドクターヘリ1件目 呼びかけに反応なし

覚知同時要請です.ランデブーポイントまで1分少々の場所.これであれば飛行に問題はありません.霧と雨と風の中を向かいます.と消防から無線が,「ドクターヘリキャンセル.」

救急隊現着時にヘリが必要なければ遠慮無くキャンセル.これがヘリ・カー事業の当たり前の考え方です.救急隊現着後要請でキャンセルなしと覚知同時要請で不要時キャンセル.どちらが患者さんへの医師接触が早くて,患者さんのためになるでしょうか.この考え方がしっかり出来ている消防とその地域では,確実に救命率が向上しています.

☆ドクターヘリ2件目 交通外傷

夕方に要請です.これまた的確な要請.すでに天候も回復傾向にあります.

JA822H・ドクターヘリは数分でランデブーポイントへ着陸,程なく搬入してきた救急車とドッキング,外傷初期診療開始です.

呼吸,循環は保たれてますが,腹腔内臓器損傷を強く疑います.診療開始して10分以内に離陸.これがTECCMC'sドクターヘリの鉄則.根治的治療はセンター内でしか出来ません.

TECCMCへ搬入,そしてtrauma CT.予想通り!・・・「岡先生,幸部先生,緊急開腹!」

術後は経過良好です.


天候は自然が相手.ヘリは万能のシステムではありません.それをいかに補完していくか.基地病院に与えられた大きな大きな命題です.