2011年5月8日日曜日

5月8日 救急医の判断

5月7日のドクターヘリは山邊先生,松井先生,森田看護師が担当.5件出動(現場3件,施設間搬送1件,離陸後キャンセル1件)でした.

5月8日のドクターヘリは岡先生,番匠谷先生,林田看護師が担当.4件出動(現場4件)でした.4件ともに外因性.暖かくなると外因性が増えてきます.そして,今回は最後の2件を紹介します.

☆ドクターヘリ 交通外傷2名傷病者

乗用車が10m転落,ドクターヘリ要請です.傷病者は2名.救急隊によりすでに救助済み.ドクターヘリはランデブーポイントで救急車とドッキングします.

岡先生,番匠谷先生が各々の患者さんを診察,重症度,緊急度を判断し,搬送順位を決定します.重症度が高いと判断した患者さんをまずは番匠谷先生がヘリ搬送,そして残りの患者さんは岡先生同乗のもと救急車でTECCMCへ向かって走ります.一人目の患者さんをTECCMCへ搬入,ヘリポートで患者さんの引き継ぎを行い,ヘリはそのまま二人目の患者さんを迎えに離陸します.そして,二人目の患者さんもピックアップしヘリ搬送,いわゆるピストン搬送です.これにより早期医療介入のみならず,搬送時間も短縮され,根治的治療開始までの時間も短縮されます.ただ,搬送順位の決定,いわゆるトリアージは難しいことも多々あり,救急医の経験,実力に左右される部分もあります.今回はまさにこの「判断」が功を奏した事案でした.

二人目を迎えにヘリが飛んでいる間,一人目の患者さんの初療が行われます.現場で重症と判断された方です.輸液を行いつつ,循環を保ちながらCT検査へ直入・・・すると左腎損傷,造影剤の血管外漏出あり!後腹膜によりパッキングされ,循環が何とか保たれているようです.この状況なら血管内治療で止血出来ると判断します.夜勤明けで院外をフラフラしていた小林も呼び戻されました.

二人目の搬送でヘリが戻ってきました.こちらは呼吸,循環も落ち着いています.気になるのは上肢のしびれ.画像検索にうつります.

二人目の診療を行いつつ,一人目の血管内治療の準備に取りかかります.ところが,「血圧低下してきました!!」 岡先生が駆け込んできます.緊急輸血も開始しています.これは輸液,輸血に反応しない出血性ショック,このままではdeadly triadから致死的状況になってしまいます.手術室へ行く時間も惜しい.「初療室開腹の準備して!」

麻酔科標榜医の前山先生がRSIで速やかに気管挿管と静脈麻酔の全身麻酔を担当,番匠谷先生,岡先生,小林で初療室開腹です.番匠谷先生が開腹,岡先生は横隔膜直下で腹部大動脈を用手圧迫,その間に番匠谷先生と小林が下行結腸を後腹膜から起こし,左腎門部を露出,クランプです.腎実質は完全に離断していますが,これで出血制御は完了.循環は立ち上がります.型どおりに腎臓摘出術を行い,後腹膜および脾損傷からの出血はガーゼパッキングを行う,いわゆるダメージコントロール手術です.腹壁を1層に閉腹,明日,second lookとします.

ICUへ入室,あとはICU担当の山邊先生に全身管理を任せます.もうこれで大丈夫.二人目の患者さんは中心性頸髄損傷.こちらも救命救急センターへ入院です.




消防が速やかにヘリ要請を行い,現場に救急医が出向く.そしてそこで判断を下す.救命の連鎖が上手く輪になる地域になりました.



芝生のグラウンド.住民にもヘリにも優しいランデブーポイントです.

 救急車内で診療中.

 救急車到着までは住民の方に見学会.「乗ってみる?」

 さて,ピストン搬送!

本文とは関係ありませんが,画像も載せてみました.