2011年5月9日月曜日

5月9日 救急隊がすくい上げた命

ドクターヘリ,ドクターカーは消防の要請があって初めて出動します.言ってみれば消防の意識の高さがその地域住民を救うことになるのです.今日はまさにそんな事案.

今日のドクターヘリ担当は小林,長嶺先生,林看護師です.1件要請の1件出動でしたが,非常に中身の濃い,後味の良い,いわゆる劇的な救命例でした.

午前中,消防署に「胸が痛い」と駆け込んできた方がおられました.救命士は直感で「やばい!」と察知,すぐに本署にドクターヘリ要請をかけ,救急車内に収容し処置を開始し始めます.冷汗著明,すぐにレベルダウン,不穏へ.モニターは徐脈になりST↑↑.救命士はパドルを装着しつつBVMでの補助換気に備えます.そしてランデブーポイントへ救急車を走らせ始めます.

そのころセンターは回診も終わり,指示出しの最中.パソコンの前に座っていたヘリスタッフの一斉PHSが鳴ります.3階の病棟から階段を駆け下り,ヘリポートまでダッシュ!JA822Hドクターヘリは但馬の空へ舞い上がります.

「50代,男性.胸痛,徐脈,ショック.」との情報.機内では慌ただしく準備が始まります.経皮ペーシング,気管挿管,輸液などなど.あっという間にランデブーポイントへ.救急車はすでに到着しています.

車内へ飛び込み診療開始.救命士は補助換気中.的確に情報を伝えてくれます.脈拍30〜40,STは関西で言うところの「ババ上がり」.冷汗で全身びっしょり.急性冠症候群に伴う徐脈,ショックです.一気に治療開始.小林はルート確保し,硫酸アトロピン投与しつつ経皮ペーシング.同時に長嶺先生は鎮静下に気管挿管.2人の救急医の治療を1人の林看護師がテキパキと救命士さんを上手く使いながらサポートします.

「良し,ペーシングにのった!搬送!!」 治療開始から機内収容まで10分.まあまあの早さですが,なにより功を奏したのは,患者さんが消防署に駆け込んで,治療が開始されるまで12分.通常の陸送であれば治療開始まで30分以上はかかっているでしょう.おそらくは陸送であれば心停止になっていると思われます.

ペーシングしつつTECCMCへ.待ち構えていた救急医,循環器医により大動脈解離を否定した後に心臓カテーテル検査.ヘリポートからのdirect心カテです.

この事案は全ての連鎖が上手くつながって後遺症なく救命できた事案ですが,その連鎖のスイッチを的確に躊躇することなく入れた救命士さんに「いいね!」1億回です!





そして,そんな中センターICUでも緊急開腹術.番匠谷先生,岡先生が執刀,麻酔は前山先生です.


皆様,お疲れ様でした.